離婚・別居前にしておくべきこと【後編】

【前編はこちら】

はじめに

前編では、離婚前にしておいてほしい事として

①夫と妻、両方の「課税証明書」を役所で取得してください。
②別居の開始は、相手の口座に一番お金が入っている日に。
③夫名義の通帳と妻名義の通帳の残高をコピー。
  ※特に別居する時点の口座の残高が分かるのが一番良いです。
④通帳の表紙と表紙を1枚めくったページをコピー。
⑤ローンの残債や保険の解約返戻金が分かる書類をコピー。

の5つがあるとお伝えしましたね。

今回のコラムでは「②~⑤がなぜ必要なのか」について解説していきます。

「理屈なんて聞かなくていい、先生の言うとおりに揃えます!」
という人は読まなくても大丈夫です。
なぜその書類が必要なのか自分でも理解しておきたいという人は是非読んでみてください。

離婚

書類は「財産分与」をするときに必要!

結論から言ってしまうと、②~⑤は、「財産分与」を有利にすすめるために必要です。
「財産分与」というのは、簡単に言うと、夫と妻の財産を半分こすることです。
半分こというと少し語弊があるので、具体例を出して説明しますね。

そもそも「財産分与」とは?

例えば、妻の財産が100万円、夫の財産が500万円だったとします。
妻と夫の財産を足すと、100万円+500万円=600万円ですね。
この600万円を半分こすると、300万円と300万円になります。
財産を半分こすると、300万円ずつということになります。
妻が持っているのが100万円、夫が持っているのが500万円ですから、 
妻の方が300万円より200万円少なく持っていて、夫の方が300万円より200万円多く持っていることになりますね。
そこで、夫から妻に200万円を渡すと半分こしたことになりそうです。

財産分与イメージ

これが財産分与の考え方です。
(※説明のために簡単な数字にしましたが、借金やローン等も考慮にいれなければなりませんから、正確な額が知りたい方は、お近くの弁護士事務所に相談に行ってください。)
ちなみに、時々「配偶者に財産がなくて借金の方が多い場合、離婚してしまったら自分も借金を負うの?」と聞かれることがあります。
多くの場合は、財産分与によって借金を背負う事はありません。ただ、この話を詳しく書いてしまうと話がだいぶそれてしまうので、また別のコラムで書くことにしますね。

財産分与はいつを基準日にするの?

財産分与は、財産を半分こにすることだという説明をしました。
では、いつの時点の財産を半分にすると思いますか?
裁判が始まった時点でしょうか、それとも裁判が終わった時点でしょうか。
答えは、そのどちらでもありません。
財産分与は、通常「別居を始めた日」の財産を半分にします。
(※これを、「財産分与の基準日」と呼びます。単に「基準日」ということもあります。)
別居を始めたのが令和3年7月25日なら、その日が「基準日」です。

察しのいい方は、ここで「②別居の開始は、相手の口座に一番お金が入っている日に」の理由が分かったかもしれませんね。
「基準日」時点のお金を半分こするのであれば、相手の口座に一番お金が入っている日の方を「基準日」にできれば、もらえる額が多くなることになるからです。
別居を急いでいない場合は、給料日やボーナスが入る日等、配偶者の預金口座に多くのお金があることが見込まれる日に別居を始めることをおすすめします。

通帳

財産分与の対象財産

財産分与が「基準日」の財産を半分にすることであることは、ここまでで分かりましたね。
では、実際にはどのように「基準日」の財産を半分にしていくのでしょうか。

財産分与をするためには、「基準日」を設定した後、お互いに基準日時点の財産を提出しあいます。
ここでいう財産とは、預金通帳の残高に加え、不動産(家や建物、土地等です)、保険の解約返戻金、車、積立金、株、退職金等々が含まれます。

財産分与の際には、こちらからも通帳のコピーや残高証明書等を提出しますし、相手からも通帳のコピーや残高証明書等財産の額が分かるものを提出することになります。

調停を無駄に長引かせないために

しかし、相手方が「資料を出したくない!」とゴネることがあります。
調停は1カ月に1回程度しかありませんから、相手からの資料を待つだけで2~3カ月が過ぎてしまうこともあります。
そこで、無用に調停を長引かせることを避けるために、別居前にあらかじめ、

 ③夫名義の通帳と妻名義の通帳の残高のコピー。(特に別居する時点の口座の残高が分かるもの)
 ④通帳の表紙と表紙を1枚めくったページのコピー。
 ⑤ローンの残債や保険の解約返戻金が分かる書類のコピー。

を取得していただきたいのです。
そうすることで、相手からの提出を待たなくても、相手の財産の証明ができるということになりますね。
可能であれば、車の車検証、積立金、保有している株が分かる書類、退職金の額が分かる書類等もそろえられると、よりいいですね。
しかし、相手の会社や保険会社に連絡をしなければとれない書類も多くあります。
「離婚する準備を一生懸命やりすぎるあまり、離婚する準備をしていることが相手にバレてしまい、トラブルになった」
というケースも時々みられます。
離婚準備は慎重にすすめるようにしましょう。。

資料

揃えるべき資料は他にも!

実は、離婚・別居前にそろえてほしい資料というのは、他にもあります。
それは、個別の事件によって違ってきてしまうので、ここに書ききることはできません。
今回書いたのは、大体どこの家にも共通する財産であり、最低限そろえてほしいものでしかありません。
Aさんの家にある財産、Bさんの家にある財産、Cさんの家にある財産、これらは全て異なります。
その家にとって、何が必要かというのは、それぞれ異なってしまいます。
だから弁護士の相談が必要なのです。

まだ離婚を考えるのは先・・という方だからこそ、今できることがあります。
調停や裁判をするときになってから・・・というのでは遅いこともあります。
ちょっとでも離婚を検討しているのであれば、すぐに弁護士にご相談ください。
いつ離婚すれば一番多くお金をとることができるのか、離婚前に何をやっておけば有利なのかはそれぞれの家庭の状況によって異なります。
離婚の時期についても相談にのることができますから、
まだ具体的に考えていないという場合もお気軽にご相談ください。

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